こどもの低緊張とはどういう状態なのか?具体的なトレーニング方法も紹介する。
低緊張とはどういう状態なの?
体幹でいうと筋緊張が低いと、インナーマッスルが脊椎の傾きに反応が遅れ、脊椎とのレバーアームが長く、大きなパワーを発揮できるアウターマッスルで制御してしまうことになります。
肩関節ではローテーターカフ、股関節では深部外旋六筋が関節の安定性に寄与するインナーマッスルです。
これらの筋の反応が遅れるため、アウターマッスルでの制御に頼ってしまいます。
動作がおおざっぱなのは、アウターマッスルを使っているため、粗大な関節の動きになってしまいがちです。
歩行時は床反力の衝撃に合わせられず、アウターマッスルの制御により身体運動の変化が急激に起こると、重心移動距離も広く不安定なふらふらした歩き方になります。
アウターマッスルは二関節筋が多いです。複数の関節運動の制御や、筋長が長くレバーアームも長いため、より大きなトルクを生み出すことができます。
筋緊張が低い状態とは、姿勢、動作に必要な筋の張りが緩いということです。
筋線維が適度に張ることで、必要とした姿勢、運動に対応できる状態にしています。
例えばキャッチボールでボールが向かって来るときに、キャッチしようと構えるわけですが、キャッチ時の身体の衝撃を減らすことや、ボールの軌道と身体を合わせるためなど適切に筋緊張を調節しているわけです。
筋緊張が低いと、筋肉のセンサーも感度が弱くなると考えられるので、関節運動のフィードバックが遅れたり、覚醒レベルが低かったり、筋出力の調整が難しくなります。
もともと筋肉が緩んだ状態から、筋力を発揮しようとすると、出力が多く必要になってきます。
運動する際には、個別の筋肉のみ使用することはありません。複数の筋肉が同時に活動しなければなりません。そのため、運動時に発揮できる筋力はより出力が必要になるため疲れやすくなります。
座位で姿勢が崩れやすかったりするのは、骨盤が後傾しないように保持するインナーマッスルの筋緊張が低くて持続しにくいこともあります。
立位だと骨盤は前傾するので姿勢はアップライトに保持しやすいです。
運動発達からいうと、筋緊張が低いから独歩できなかったりといったことは、ほぼほぼないです。なぜなら筋緊張がすごく低くても独歩獲得している人がいるからです。
なぜ独歩を獲得できるたのかといったところは筋緊張が低いこととは別にあります。
では、筋緊張を上げるためにどうすればいいのか?
いや、そもそも「筋緊張を上げる」こと自体、本当に狙うべきことなのだろうか?
トレーニングをして一時的に筋緊張が上がった。。。
それで?となります。その先を見ないといけません。
なんのためにトレーニングをするのか?
座れるようになりたい。立てるようになりたい。歩けるようになりたい。
これらは筋緊張の低さが主の原因ではありません。
ちなみに筋緊張を上げるより、落とす方が簡単です。
なぜ、「筋緊張が低いのか」「筋緊張が低いためになにが困っているのか」を考えなければなりません。そうすればおのずと筋緊張が低いから上げるといったことは出てこなくなります。
筋緊張が低いと、体重を支える筋力も弱いです。そうなると運動経験は少なく、運動発達はゆっくりになります。ゆっくりなまま過ごすことで、環境と相互に関わる経験も乏しくなるので、知的な発達もゆっくりになります。
そのためいかに姿勢、運動を経験させることができるのかがポイントになってきます。
具体的なトレーニング方法
動作トレーニングとは、子どもにとって意味のある動作の練習です。お座りの練習ならお座りで遊ぶことを行います。遊ばせる中で、介助者が支えるところは自分で姿勢を保持できない場所です。 骨盤を支えてもグラグラするなら、お腹周りを支えるなど。遊べるギリギリの場所を支えるのがポイントです。
ダイナミック運動トレーニングとは、ダイナミックに遊ぶことです。低緊張の子どもは重心を動かすのが苦手なので、大きな身体の動きに合わせて姿勢を保持することの経験を積みます。例えば、バルーンに乗ったり、抱っこでうつ伏せ、トランポリン、段差を登る、降りるなど。
環境支援トレーニングとは、座れない子どもに椅子を使ったり、歩くのが遅い子に歩行器を使ったりすることです。日常生活の中で、生活の一部として、立ったり座ったり歩いたりすることを取り入れます。そうすることで、子どもの活動量は大幅に向上します。
まとめ
- 筋緊張の低さは運動発達と関係なく人それぞれ。
- 筋緊張が低いと疲れやすかったり、動きが粗大になる。
- 筋緊張を上げることに焦点を当てるのではなく、なにを経験できていないかを考える。
- 経験することで活動量が増え、自己肯定感も向上し、運動意欲が高まる。
- 結果として、筋緊張が上がる。
四つ這いは絶対にしないといけないのか?
四つ這いはぜったいにしないといけないのか?
運動発達には個別性があり、四つ這いせずに独歩を獲得するこどもがいます。それも少人数ではありません。
それならば、リハビリテーションにおいて四つ這いを経由して独歩を目指すことは必ずしも必要な運動ではないのではと思います。
四つ這いをせずに独歩を獲得するこどもたちはどのような経過をたどってきたのか。
もともとうつ伏せが嫌いなお子さんが多く、いざりで移動を獲得しながら、つかまり立ち、伝い歩きと進んでいきます。
ほかには、ずり這いからつかまり立ちを多くとれる環境にいると、つかまり立ち、伝い歩きと進み、立位、歩行の獲得へと進んだりします。
身体の重さからも、四つ這い姿勢をとることが難しいこどももいます。
いずれにしても、独歩獲得していきますので、発達においてはさほど重要ではないと思います。
ではなぜ四つ這いをしたほうがいいと世間で言われ続けるのか。
手での支持が、手掌内在筋の発達に寄与し、肩甲骨を含め肩関節の安定性が得られ、巧緻性が向上する。
四点支持からの一側の上肢、下肢を挙上し、回旋するため、体幹のコアスタビリティがトレーニングされ、体幹の安定性が向上する。
股関節での荷重支持がうながされ、圧中心が変化する中で、姿勢制御能力が向上し、立位や歩行の安定性に寄与する。
これらの機能の発達がうながされたところで、最終的な独歩につながるかどうか。機能だけみるとつながります。
しかし、なんらかの運動障害があるこどもでも四つ這いが可能だが、独歩できない子もいるのが現状です。
なぜ四つ這いができて独歩ができないのか。一つは獲得時期による差があります。
GMFCSでは 2〜4歳までに四つ這いを獲得できれば、今後、独歩獲得の可能性が高いといわれています。
他の予後予測でも交互性の四つ這いが要素にあがっています。
これは脳の可塑性によるもので、どれだけ多様な運動経験ができたかが、その後の運動の獲得につながるということだと思います。
四つ這いの獲得が独歩獲得に影響している因子としては、股関節の安定性だと思います。人は膝立ちで歩けます。
ここで話を戻します。
四つ這いをしないまま独歩を獲得したこどもはなぜ独歩を獲得するのか。
四つ這いをしないこどもの発達の経過を追うと、必ず、つかまり立ち、伝い歩きを経験しています。
四つ這いは経験していないが、つかまり立ちや伝い歩きで手や足で支えることによって四つ這いの形の学習をしています。
このように四つ這いで得られる要素を立位で得ることができ、さらには独歩につながる経験をしているということになる。
なぜ四つ這いをしないのかは、現状解明されていませんが、必ずしも四つ這いをしないと歩くことができないというのは違うと思います。
リハビリテーションにおいて、早期から四つ這いの獲得は独歩の予後予測に関わってきます。しかし、四つ這いすることが難しいこどもに対して、
いやいやながらも四つ這いの練習に時間を費やし、立位や歩行の練習経験が少なくなると、どっちも獲得できない可能性があると思います。
下肢の支持性の評価方法
下肢の支持性とは、抗重力下で大腿骨、脛骨、腓骨、足根骨、中足骨、趾節骨のいずれかを基底面とした、それより近位の下肢関節に必要とされる荷重を受け安定させる機能といえます。
抗重力下において下肢の支持性は座位、四つ這い、立位、歩行や下肢の支持性を得たことによる頭部、体幹、上肢操作など様々な活動に関わってきます。
脳性麻痺やその他疾患により、下肢の支持性が未熟な状態のこどもたちは多いです。
このようなこどもたちのリハビリテーションの中で立位、歩行の重要度は高く、下肢の支持性を向上させることは、発達を促すリハビリテーションの方針となりえます。
下肢の支持性を改善させるにあたって、まずどのように下肢の支持性を評価するのか知る必要があります。
臨床的な下肢の支持性の評価方法を紹介します。
立位保持が難しい場合や各関節の支持性を評価する場合
大腿部、下腿部、足部を徒手的に安定させ、股関節、膝関節、足関節のどの関節が不安定なのかを診ます。
膝関節が不安定なら、下腿部を安定させると膝折れしますが、大腿部を安定させることで支持が可能になります。
下腿部でも安定していれば、足部を固定して足関節の支持性を診ていきます。
姿勢や環境によっても評価できます。
膝立ちでは股関節の機能をみることができます。
立位になると膝と足が関わってくるので、短下肢装具で足関節を固定した状態で膝関節の機能をみることができます。
このような関節の1つ1つを評価する方法が臨床的によく用いられている方法です。
立位保持が可能な場合
よく用いられている方法では体重計を使って、どの程度体重を支持することができるのかを評価します。
簡便な上、数値化でき客観的な指標になり得ます。
体重を支えきれなくなり、膝折れが生じた場合、その現象が生じる体重を計ることができます。
また、前述した各関節の支持性の評価を行うことで、どのくらい体重が支持できるのか評価できます。
例えば膝関節を安定させた状態で体重計で荷重量を計った場合に、荷重量が増えた場合、膝関節の問題を疑う指標になるでしょう。
体重計がない場合
片脚立位の左右差や段差にステップ位をとった状態での荷重側下肢のバランス能力をみることで評価できます。
膝立ちから片膝立ちへの姿勢変換の中で股関節の支持性を評価したりします。
痙性麻痺がある場合
下腿三頭筋の麻痺の影響により、底屈筋力が発揮しにくく背屈方向へ不安定になります。
運動失調がある場合
重心動揺を減らすため、代償的に過剰に下肢を固定して、スムーズな重心移動を阻害します。そのため、下肢での重心制御が困難です。
そのため下肢の支持性低下を評価する際には、体幹の評価も必要になってきます。
運動療法を組み立てるにあたって
下肢の支持性は、様々な筋が協調して活動するため、膝だけ、股関節だけといった局所的なアプローチだけではなく、その人の生活にとって必要な行為や課題の中で重心位置と下肢全体のアライメントから、環境調整をしながら運動療法を組み立てることが必要になります。
運動学習で一番重要なことはなにか?
運動学習を簡単に解説する。
細かいメカニズムや定義、強化学習や誤差修正学習、試行錯誤学習などの用語解説はしません。
運動学習について
運動を学習することは一言でいうと、「その運動を自分でイメージできるようになる」ことです。
ひとは新しい運動を獲得するにあたって、まず、どんな動きをするのかイメージします。そしてやってみます。やった後、動きを微調整し、自分の中で運動のイメージは作られていきます。
このような流れで、学習していきます。
ここで重要なのは本人がやろうとする意思があるのかです。
意思がないと、何をするのか教えるにしても動きのイメージが意識に入ってこないです。
したがってその人の意欲を引き出し、どのような運動をするのかを教示することが一番重要な最初のステップです。
やろうとする意思があり、動きがみられたらこっちのもんです。動きがみられてやろうとしたら、めちゃくちゃ褒めてあげます。
あとは、失敗体験を少なくしながら、スモールステップで徐々に課題をゴールに進めます。
ここで教えるときには、ハンドリングは必要ありません。
自分で自分の身体の変化にきづいて自分で修正しようとすることが一番大事です。
リスク管理や失敗につながらないようすぐに危険を回避できるくらいの見守りは必要です。
なのでハンドリングで誘導したところで、自分の意図と他人の意図がごっちゃになり、学習しようとすることに水を差すことになります。
なんとか運動ができた頃から、自分で修正して効率的になってきました。
次は、考えなくてもできるようにします。
毎回同じ環境で行ってきた運動が、いざ違う場所でしようにも、いつものところと違うからできないですよね。
そうならないためにも、日常的に繰り返し行う必要があります。
何百、何千、何万と回数をこなし、身体が勝手に動くまで行うことを意識して日常的に運動する環境をつくります。
日常的にというのは、その運動が必要な場所で行うということです。
実際場面で行うことが一番定着しやすいですね。
ここまでくると、運動がイメージできるようになってきます。
イメージできるようになると、自然に身体が動き出します。
例
料理をするにも1つ1つの工程をイメージしながら行っていると思います。
自転車に乗るのも、周囲の光景に注意しながらハンドルとペダルを操作する感じをイメージできると思います。
自動車も同じです。車両感覚も同時にイメージできますね。
バック転するのも後ろのどの方向でどれくらいの出力でジャンプするかの感覚がイメージできると思います。
階段の昇り降りも、足の上げ方、足の曲げ方、どのくらいの支えが必要かイメージできます。
蹴上げの高さや踏面の幅が違う場合でさえ、その階段をみたら昇り降りするイメージができます。
まとめ
その運動をやろうとする意図があり、自らの力で学ぼうとする中で、効率的になり、日常的にその運動を汎化させ、自動的に運動が遂行できるようになる。
簡単に筋緊張を緩める方法
「痙性で筋緊張が亢進し動かすのが難しい」「ストレッチしても硬くて動かすのが困難」「簡単に筋緊張を落とす方法はあるのか?」
筋緊張が高くて動かしにくい手足に対して、ストレッチをすることで、緩むことはできますが、それだけでは本当に緩んだとはいえません。
ストレッチ以上に効果的で簡単な方法をご紹介します。
筋緊張とは
筋緊張は簡単にいうと筋肉が勝手に収縮した状態です。
私たちが立っている時と寝ている時の筋肉の張りは違っています。
寝ている時は、だらっとしていますが、立っている時はシャキッとしています。
それぞれの姿勢に合わせて筋緊張を調整してるのです。
その調整は基本的に脳が行なっており、歩いている時、走っている時も動きやすいように筋緊張を調整しています。
痙性麻痺
脳や脊髄になんらかのダメージがあった場合に、痙性麻痺と呼ばれる筋緊張が高い状態になるときがあります。
普段、脳は筋緊張が強くなりすぎないように抑えていますが、その脳がうまく働かなくなることで、抑えが効かなくなり勝手に筋緊張が高い状態になってしまい、関節を動かそうとしても硬く動かしにくいです。
これが、痙性麻痺と呼ばれる状態です。
ただ、この痙性麻痺のみが筋肉を硬くしているわけではありません。
その筋肉自体やその周りにある組織も硬くなりやすくなります。
そのことを知っておく必要があります。一次的には痙性麻痺で筋肉が硬くなり、二次的に周りの組織が硬くなっていくということです。
筋緊張を落とす方法
いちばん簡単な方法は「自分で動かすこと」です。
例えば、肘の屈伸、膝の屈伸、股を広げる、足首を動かすなど。また、立ち座りなどの動作も同様です。
人間は、関節を動かそうとすると、その関節にまたがる筋肉は緩むように設計されています。神経科学的にそうなっています。
そうやって運動する前と後では、関節の柔らかさが全然違います。
子どもの場合、「肘を曲げて」「足首を動かして」など、口頭で理解することや、細かな関節の運動は難しいです。
遊びの中で、手を使う、足を使うなど外的な手がかりで普段使うことの少ない身体を動かしていきます。
硬かった足や手は緩んできます。
さらには、運動機能の改善にもつながります。
以下にその理由を書いています。
使わないとどうなるか
痙性麻痺のある手足は、①自分で細かく動かすことが困難になります。そうなると、作業する際にうまくいかず、②使いやすい良い方の手足を優先的に使用したり、動かせるところだけ動かそうとします。すると痙性のある手足の筋緊張はより高まった状態が続きます。
これが続くと③学習性不使用と呼ばれる状態になり、麻痺のある手足は余計に使わなくなり、硬くなり、意識しなくなり、そして動かせなくなります。
うまく動かせなくなった手足のままで成長すると、手を使うことや立つ歩くことがより難しくなります。
筋緊張を落とすには、自分で動かすことが必要ですが、さらにその先には①が改善し、②の偏りが減り、③への悪循環を断つことができます。
③になれば、筋緊張の高まりが習慣的となり、筋肉自体の柔軟性が低くなり、筋肉以外の組織の硬さの割合も増えています。
このような場合、いざ動かそうとしても、動きにくくなっているので、ストレッチしてから動かすと良いです。
いずれにしても、「動かさない」ことが一番筋肉が硬くなる原因になるので、できるだけ早い段階からどんどん動かしていくことが、将来の運動機能の獲得につながっていきます。
脳性麻痺のバランス評価② 膝立ち、立位、歩行
膝立ち
立位の前に膝立ちも評価ができます。膝立ち時間は何秒か、股関節の角度はどのくらいか。上肢帯の位置はどうなっているのか。
膝立ちで歩けるのか、歩けるなら何歩いけるのか、手引きは必要なのか。
片膝立ちは高度なバランスが要求される姿勢ですが、片脚立ちと同様に何秒保持できるのか等みていくことができます。
立位
立位においても静止立位保持ができるのか、介助量はどの程度なのか、何秒何分可能なのか。
開眼と閉眼での違いはあるのか。四肢体幹の関節運動は重心移動に対してどのような戦略を取っているのか。
重心を左右に移すことができるのか、垂直方向へのコントロールはできるのか、前後はどうか。
しゃがんだり、後方に振り返ったり、上方の物に向かってリーチしたりできるのか。
つま先立ちや閉脚立位、タンデム肢位、ステップ肢位等の基底面の違いでの保持はどうなっているのか。
片脚立位も含めどのくらいの時間保持できるのか。
臨床評価指標として前回のFBSの立位の項目があります。他には動的な立位バランス評価としてFanctional Reach Test(FRT)がありますので転倒リスクや治療の効果判定に使用するとよいでしょう。
歩行
つたい歩きレベルでは角曲がりや壁つたい歩き、渡り歩きができるのかなどつたい歩きのレベルを評価することができます。
介助歩行であれば両手引き、片手引きなどどの程度の介助量で歩けるのか。何メートル、何分などのパラメータも同時にあると良いです。
独歩可能なら何歩、何メートル、何分などの量的評価とワイドベースハイガードのように質的評価をみます。
歩行は前進以外にも側方や後方にもステップします。ステップ反応が出る方向や、後方や側方に歩行はできるのかをみると歩行の習熟度がわかります。
応用歩行は狭い道や凸凹道、坂道などの不整地や物を持っての歩行など様々な歩行条件で評価することができます。
臨床評価指標では10m歩行速度や最大歩行速度、6分間歩行距離といったもので評価できます。
またTimed Up and Go Test(TUG)では転倒リスクや立ち座り、方向転換など応用的に評価できます。
歩行は常に重心が動き、歩行開始、停止、方向転換などダイナミックな圧中心の変動が必要な動作になります。
そのためダイナミックな動きに合わせた四肢体幹の関節運動を歩行相で評価します。いわゆる正常歩行を参考に歩行効率を考えていきます。
立脚期では床反力に応じた下肢体幹の関節運動はどうなのか。支持機能として安定しているのか。また推進機能として使えているのか。
遊脚期ではクリアランスと下肢関節運動を観察して初期接地時にどのようなアライメントでスタートするのか。
以上、ざっくりとバランス評価についてご紹介しました。もちろんこれ以外の評価はありますが、こんなイメージでみていくと、バランスの何が、が比較できるのではないでしょうか。
脳性麻痺のバランス評価① 臥位、座位
「まだ座位で動揺がみられる」「立位が不安定」 「歩行時の姿勢制御能力が低い」
臨床上、よく耳にする子どもの臨床像ですが、上記は表現の違いはあるけれども結局バランス能力が低いということですね。
では、仮にバランス能力の向上を目標にあげるとして、結果、座位で動揺が減ってバランスが向上した。立位の安定性が向上した。歩行時の姿勢制御が向上した。
という風には主観的には感じるかもしれませんが、客観的にはいまひとつ。どのくらいバランスが良くなったの?となるでしょう。
そのためには具体的な指標で評価する必要があります。
各姿勢毎にバランス能力をどのようにみていくか、評価することはなにかをご紹介していきます。
臥位レベル
腹臥位
このレベルではヘッドコントロールと支持機能をみます。ヘッドアップはどの高さで何秒可能なのか、回旋できるのか。
支持機能では肘支持、手支持で何秒支持できるのか。上肢のつく位置は肩より前なのか、後ろなのか。一側上肢の挙上の高さや時間、課題遂行はどうなのか。
四つ這い支持は何秒できるのか、股関節の内外転の位置はどうか。
四つ這い移動では移動距離や時間、一側上肢の挙上で三点支持を作れているのか、階段や段差はどのくらい登れるのかなど。
背臥位
ヘッドコントロールと四肢体幹の空間コントロールをみます。ヘッドコントロールでは、正中位に保持できるか、回旋できるのか。
上肢のリーチはどの程度、範囲できるのか、正中線を交差できるのか。両手を同時に上げれるのか。
下肢の挙上はできるのか、どの範囲まで可能なのか、骨盤の動きは見られるのか。
側臥位
側臥位では、姿勢保持と上下肢の動きがどの範囲まで見られるのか、同時に寝返ってしまうのか姿勢を保持したままなのか。
座位レベル
保護伸展が前側後みられるのか。床座位、端座位など各座位姿勢で何秒何分保持できるのか。上肢支持や足底接地の有無での違いはどうか。
上肢支持ありの場合は一側上肢をどのくらい挙上して時間はどれくらい可能なのか。両手を離してどれくらい可能なのか。
足底接地の場合は、片脚が挙げられるのか、時間はどれくらいなのか。
主にリーチの伴う体幹と骨盤の前後傾、側方移動や後方回旋による座位保持能力はどうなのか。
臨床評価指標にFanctional Balance scale:FBS(またはBerg Balance scale:BBS)があります。
座位保持や立位、立ち上がり、片脚立ちなど全部で14項目の検査がある総合的なバランス評価です。
この中の座位保持の検査項目から点数を出して変化をみていくのも座位バランス評価の指標として使えます。もちろん総合的なバランス評価として使うこともできます。
記録
時間、距離、運動範囲など具体的な指標を用いることで、判定がわかりやすくなります。
また、姿勢や動作の獲得の際には、運動の成熟具合が現れるため、その変化として、基底面の広さだったり、重心や圧中心の位置、それに伴うフィードフォワード制御の有無なども変化として捉えていくことが必要です。
NXET 立位、歩行