脳性麻痺児者の股関節脱臼の原因や予防法

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「股関節脱臼ってどうして起こるのか」「予防する方法はあるのか」

脳性麻痺児者の二次障害の一つに股関節脱臼があります。脳性麻痺児者全体的にリスクはありますが、特にGMFCSⅣ~Ⅴで粗大運動が低くなるにつれて多くみられます。脱臼は側弯や痛みなど健康状態の悪化につながるためできるだけ予防する必要があります。完全な予防はないと思いますが、脱臼リスクを軽減させるにはどうしたらいいのか。関節脱臼の治療は定期的にレントゲンを撮り経過を追う中での検討となると思いますのでここでは控えています。

 

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原因

荷重経験の不足

一番の原因は荷重経験の不足です。荷重しないと股関節の形成は未熟なままで、寛骨臼の受け皿が浅く大腿骨の発達も未熟なため容易に外れやすくなる原因となります。

股関節周囲筋の筋活動不足

臼蓋に骨頭を押し付ける力、求心力が必要です。特に、中殿筋の収縮が重要です。外転筋の筋収縮による求心力が骨頭と臼蓋の形成に必要不可欠であると言われています。

ただ立っているだけでなく、立位で股関節周囲筋の筋活動を促していくことが大切です。歩行がベストな方法です。歩行獲得しているGMFCSI、IIレベルの子どもたちの股関節脱臼の割合が少ないのは歩行しているからですね。

股関節周囲筋の筋緊張亢進

股関節周囲筋の筋緊張の亢進によって筋のテンションが常に高い状態が続きます。大腿骨頭が引っ張られて受け皿である寛骨臼から外れる方向に力が働きます。

筋の短縮

股関節周囲筋の短縮によって膝が伸びにくくなったり股関節が伸びにくくなったりします。伸びにくくなると筋のテンションが強くなるため外れやすくなります。

骨の成長

筋の短縮の原因ですが、骨の成長が筋より早いため相対的に筋は縮んでいきます。成長過程の中で立つ歩くなどで常に筋をストレッチしていれば影響は少ないと思いますが、あまり動きが少ない方で足を伸ばす習慣が少なかったりすると骨の成長に対して筋の相対的な短縮は起こりやすいです。

予防

荷重経験

荷重をさせましょう。そして股関節を作っていきましょう。プロンボードを使うことで立位姿勢をとることができ股関節へ荷重させることができます。

 

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筋のストレッチ

股関節周囲筋のストレッチをします。主には二関節筋であるハムストリングや薄筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋です。二関節筋は関節と距離があるので力が強く、またアンバランスな筋の張力がかかりやすいです。そして短縮しやすいです。もちろん長内転筋や中殿筋などの筋もしっかり伸ばすべきです。プロンボード立つことによって特にハムストリングや股関節屈筋群のストレッチが得られやすいです。

脱臼肢位を避ける

脱臼しやすい股関節の動きがあります。股関節の屈曲内転内旋位です。大腿骨頭が外れやすくなる動きです。これは主にトンビ座りや割座と呼ばれる座り方でみられる股関節を曲げて膝を内に捻る姿勢になります。他にも同様な動きをすると外れやすくなります。割座は骨盤や体幹が安定して上肢が使いやすくなる面がありけして悪い姿勢ではないですが、ずっとその姿勢を続けると膝裏のハムストリングスが短縮し膝が伸びにくくなるため脱臼リスクが高まります。ストレッチはしておくべきです。

姿勢管理

長時間同じ姿勢を避け、多様な姿勢バリエーションを日常生活の中に組み込みます。特に股関節脱臼になりやすい姿勢を避けることが必要になります。

症状

脚の長さが左右違う

股関節脱臼していると脱臼している側の脚はしていない側に比べて短くなっています。これは大腿骨頭が外れているためです。

開排制限

股関節脱臼している側の股関節の外への開きが悪くなります。脱臼しているため股関節の不適合により関節の動きが制限されるためです。また筋の短縮も含まれてより開きにくくなります。股関節の開きが悪くなるとオムツ交換が困難になり、胡座もとれなくなります。また背臥位で股関節が伸びないためどちらかに骨盤が傾きます。

側弯のリスクが高まる

上記のように背臥位で股関節が伸びないため骨盤が傾き回旋していきます。骨盤の回旋につられて腰椎も回旋し曲がっていくため側弯が生じやすくなります。また、座位姿勢においても股関節脱臼している側に傾くため常に脊柱が曲がった状態になりやすくなり側弯のリスクが高まります。

痛み

股関節脱臼によって痛みが生じることがあります。股関節が脱臼すると骨が擦れたり軟部組織への刺激により痛みが引き起こされます。また痛みが生じないこともあるため、股関節脱臼に気づかないこともありますので、普段から症状に注意する必要があります。

運動療法

開排練習

うつ伏せで股関節の屈曲外転外旋の動き(膝を外に向けながら太ももを引き上げる)を行い股関節の適合を高めます。

立位、歩行練習

これは重要です。股関節への荷重はいうまでもなく大事な要素になります。立位や歩行のなかで股関節周囲筋のストレッチや筋力トレーニングが行われるので股関節の安定に働きます。プロンボードの活用もこれに入ります。

筋力トレーニン

立ち上がりや立位、歩行の機会を作ることで股関節周囲筋の筋力を高め股関節の安定性を向上させます。

ストレッチ

これも重要です。あぐらを取る。プロンボードに立つなど、股関節周囲筋のストレッチを行うことで筋の短縮による股関節脱臼リスクを軽減させます。プロンボードの効果や立つ時間などは上記にある過去の記事を参照ください。

 

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