プロンボード(立位台)の効果とその理由について

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「プロンボードに立たせるとどんな効果があるのか」「立つ力以外にもどんな効果があるのか」

立位台もしくはプロンボードと呼ばれる福祉用具はは前もたれで立位姿勢をとることができるものです。呼び方の違いはありますが、同じものととらえて問題ありません。施設やセラピストごとに呼び方がちっがたりしますので(個人的には立位台のほうがわかりやすいが)

小児リハビリテーションにおいて多くの方がプロンボードを利用しています。小児リハビリテーションの対象者は立位や歩行する機会がどうしても少なくなります。かつ痙性麻痺などの筋緊張異常や成長という小児ならではの身体変化が大きく関わってきますので、関節拘縮や股関節の形成にとって立位ををとることは大切なことになります

骨形成の促進

骨の成長には荷重は非常に重要です。骨への機械的刺激は骨形成を促進し前後軸・腹背側・遠近軸の3方向への制御が大切といわれています。骨に荷重刺激を加えるとカルシウムイオンの沈着が促進され骨量の増加、骨内の血流増加による骨芽細胞の活性化が行われ骨形成の促進が行われます。関節形成にとっても重要で、刺激が加わらないと関節裂隙がなくなることがいわれています。そのためプロンボードに立つことによって、荷重という機械的刺激が骨に加わり骨の成長、関節の成長が促進されます。

骨粗しょう症の予防

脳性麻痺の方は早くて2歳頃から骨粗しょう症になるといわれています。骨への刺激が減少することや栄養の問題が関わってきます。上記のようにプロンボードに立つことによって骨への荷重負荷がかかり骨の発達が促進され骨密度の増加につながります。

股関節の脱臼予防①股関節の発達

これは一番重要なポイントです。股関節への荷重負荷が少ないと骨盤の臼蓋形成が未熟なままで浅い受け皿になってしまいます。大腿骨の骨頭は頚体角は大きく外反股のままであり前捻角も過前捻のままで関節適合が不十分になります。これら股関節を形成する骨の未発達が股関節を容易に脱臼させる原因となります。プロンボードに立つことによってこれら股関節を形成する骨の発達を促進させ股関節の適合性を高めることで股関節脱臼の予防につながります。

股関節の脱臼予防②関節拘縮の予防

子どもは成長を伴います。骨の成長と同時に筋肉の成長も必要です。立位や歩行の経験不足は股膝関節周囲筋の伸張性を低下させ伸びにくい状態が続きます。骨は成長していくが筋は伸びにくいままになっているので、余計に筋肉の張力は高くなります。筋肉の張力は関節を曲げる方向に働くため股関節や膝関節が伸びにくくなります。さらに股関節の形成不全が伴うと筋肉の張力によって大腿骨の骨頭は外に外れる方向に働くため脱臼してしまいます。プロンボードに立つことによって股関節や膝関節をしっかりとストレッチすることができるので骨の成長に合わせて筋の短縮を予防し股関節脱臼予防につながります。

 ↓筋の短縮とストレッチについて

ptemon.hatenablog.com

 

循環動態の改善

立位や歩行機会が少ないと心肺機能は低下します。下肢の循環が減ることで全身の血流が滞り自律神経系の反応は低下していきます。プロンボードに立つことによって血液は下肢血管に貯留することで血管が収縮し心拍出量の増加や脈拍の増加がおこります。さらに腹圧がかかることや体幹は伸展位にあるため横隔膜の活動も促され呼吸機能の促進が腹腔内の血流増加、全身の循環動態の改善につながります。血流は上記の骨や筋の成長にとても重要です。

抗重力筋活動の促進

どうしても座位時間が多いと覚醒が低下し全体的な筋緊張も低下してしまい、抗重力方向への筋活動の経験が不足してしまいます。立位をとると骨盤を中間位に保持することができ体幹は伸展方向にアライメントは整います。さらに前庭小脳路の働きで下肢体幹での支持が生じやすくなり、抗重力筋活動が促進されます。体幹が伸展位に保持され安定することで頭頸部の伸展も得られやすくヘッドアップにも貢献します。

上肢活動の促進

 プロンボードに立つことによって前傾姿勢が得られます。さらに体幹部が安定することによって肩甲骨周囲筋の過剰な筋緊張は低下し動きが得られやすくなります。前傾姿勢では重力により肩関節が屈曲することができるので筋力を必要以上に発揮することなく手を正中位に保持しやすくなります。目と手の協調性が得られることで上肢操作が得られやすくなります。

プロンボードの使用頻度、時間

毎日1時間立つとストレッチ効果が得られたり、週2~3回1時間立つと骨密度の増加が得られたりといった報告があります。1時間とれない環境であれば小分けで立っても大丈夫です。しかし、プロンボードに立つといっても前傾姿勢であったりベルトの使用もあり人によって荷重量はばらばらです。どのくらいの荷重量でどのくらいの頻度や時間で立つことで上記の効果が得られるのかは現段階でははっきりしていないのが現状です。目安としてできるだけ毎日1時間が適当と思われます。

 

以上