股関節の関節合力と外転筋群の効率について

股関節外転筋群は歩行単脚立脚期や片脚立位時の股関節の安定には欠かせません。そのため疾患問わず多く方に重要な筋群となっており、様々な筋力トレーニングが行われています。

股関節は骨盤の臼蓋と大腿骨頭で形成されています。主な外転筋である中殿筋は腸骨の前殿筋線と後殿筋線の間、腸骨稜外唇から起始し、大転子の上面から前面にかけてと後上端に停止しています。この中殿筋の筋力発揮は骨頭中心からの内側レバーアームと外側レバーアームによって変わってきます。このレバーアーム比によって外転筋群の効率が変わってきます。

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①大転子最外側点と骨盤最外側点へ接線を引く

②腸骨の内側壁から接点へ最短距離を結ぶ線の外側1/3をとる

③外側1/3から大転子最外側点へ直線を引く→外転筋力

④骨頭中心から内外側レバーアームを引く。

 内側レバーアームは荷重線へ(身体中心を通る線)

 外側レバーアームは③への最短距離

レバーアーム比=A/B 外転筋群の効率低下の具合がわかる

 男性平均は1.76、女性平均は1.88との報告がある。外転筋力はBの長さと体重によって効率が変わる。

Bの外側レバーアームの長さを変える要因の一つに頚体角の角度の増大があります。新生児は145°の頚体角を持ち、成人は130°に変化していきます。頚体角は骨頭の内外転軸と大転子の距離を変化させ、頚体角が大きければ大きいほどレバーアームは短くなり、体重を支えるためにより強い外転筋力が必要になります。頚体角は骨頭への荷重と歩行開始した後の外転筋力の大転子への作用によって発達していくため、歩行経験が未熟な子どもにとって外転筋力の弱さは股関節の形態によることも念頭に置く必要があります。

歩くことがどれだけ股関節に貢献しているかがわかります。