小児理学療法における目標の考え方

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理学療法において目標設定は大切です。目標がなければ治療はできませんし、何をするのかも明確になりません。でも目標を考えるのは難しいことでもあります。対象者の身体状況や予後、専門職のニーズ、対象者やそのご家族のニーズ、生活環境、リハビリの目的や時期などなど踏まえた上で考えていくことになるので、総合的な判断ができないといけません。当たり前といえば当たり前ですが。

目標を考える上でのポイントを考えてみます。

対象者のニーズを聴く、引き出す

乳幼児期は運動発達を優先課題として考えられます。しかし、18歳までずっと続くことが多いので、しばしばリハビリ自体を目的として行っていることがあります。主訴やニーズがなくてもただリハビリしてほしいという気持ちはわかりますが、ある程度のニーズがないと目標に一緒に取り組む姿勢が得られにくいと思います。特に月に1、2回くらいのリハビリではリハビリ以外での生活環境の中でどう過ごすかが大事になっていきます。それには専門職からの発信も必要です。対象者とともに考えて納得のいく目標を決めていきます。

運動発達やADLの獲得を諦めない

乳幼児期は運動発達メインと言いましたが、もちろん学童期や思春期においても運動発達は課題として考えていかないといけません。

乳幼児期は発達の力があるのである程度運動発達は進みますが、その後の運動発達は学習的になります。なので乳幼児期にどれだけの粗大運動の獲得ができるのか大切になってきます。

乳幼児期以降はリハビリの回数も減り社会参加が多様となるので、これまでに獲得された粗大運動の中でどのように環境適応させていくのかが目的となってきます。なのでリハビリ内容に関しても日々の生活の中での身体チェックや変形拘縮予防が主となってきがちです。

ここで忘れてはいけないのが運動発達の獲得は学習的な傾向になるということです。つまりある程度の代償がありつつも行っている運動は学習し獲得されていくということです。逆に行わなければ学習もされず獲得もされないままです。

移乗動作にしても階段昇降にしてもあるいはクラッチ歩行や独歩、つかまり立ちにしても行わなければ学習できません。

歩容や姿勢を良くすることばかりでは新たな運動の経験が少なくなるばかりでその子の可能性を狭めてしまう恐れがあります。なので乳幼児期以降も目標を考える際は運動発達も含めてADL面での目標設定をすることも重要と思います。

介助量の負担を考える

これは子どもが大きくなる前から考えておかなければならないことです。そのためのリハビリといってもおかしくはないと思います。保護者はもちろん学校や施設のスタッフへの介助負担を考えてどれくらい1人の力で行うことができるのか、どうしたらできるのか行わせるのかがポイントになります。

子どもたち自身は周囲の支援者たちがサポートしてくれるので生活する上での障害はそもそもありません。なので介助はつきものです。体格が大きくなればなるほど負担は大きくなるので、介助するにしてもいかに安全で負担の少ない方法で行うかになってきます。そのため子どもたちの活動量は減り、余計に介助負担が増えることが起こり得ます。

座位が取れなくても介助歩行が出来るだけでも全然違います。できないことをこだわることも大切ですが、なにが出来るのか、なにを伸ばしていけるのかを考えていくこともこだわることは大切だと思います。