デュシャンヌ型筋ジストロフィーの評価やリハビリの注意点、目的など

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デュシャンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)は筋ジストロフィーの中で一番患者数が多い型で、伴性劣性遺伝で男子の発症となります。筋肉構造の維持に必要なジストロフィンの機能不全によりカルシウムイオンが筋細胞内に流出し筋線維が融解していくといわれており、次第に全身の筋萎縮が進行していき肩関節周囲や骨盤帯周囲の近位筋が著しいです。運動機能のピークは大体5歳くらいで徐々に進行とともに運動制限が生じてきます。

予後と評価

厚生労働省研究班によるDMDの機能障害度分類

運動能力からそれぞれ8つのStageに分けることができます。

Stage1:階段昇降可能 a手の介助なし b手の膝おさえ

Stage2:階段昇降可能 a片手手すり b片手手すり・膝手 c両手手すり

Stage3:椅子から起立可能

Stage4:歩行可能 a独歩で5m以上 b一人では歩けないが、物につかまれば歩ける(5m以上) ⅰ)歩行器 ⅱ)手すり ⅲ)手ひき

Stage5:起立歩行は不可能であるが、四つ這いは可能

Stage6:四つ這いは不可能であるが、いざりは可能

Stage7:いざりは不可能であるが、座位の保持は可能

Stage8:座位の保持は不可能であり、常時臥床状態

経過

3歳頃に転倒のしやすさがきっかけで気づくことが多いです。下腿三頭筋の仮性肥大と拘縮がみられ、歩行中に踵がつかない尖足歩行が特徴です。また近位筋の筋力低下による動揺性歩行がみられ、尖足歩行とともに歩行時のつまづきやすさをきたしやすいです。

大腿四頭筋の筋力低下により走行や階段、台からのジャンプ、しゃがみ込みなど大腿四頭筋の遠心性収縮を必要とする場面では、制御しきれず膝折れもみられます。立ち上がりは登攀性起立が特徴的な動作となり、床から手をついて起き上がり膝に手をかけ腰を反らせながら少しずつ起き上がっていきます。

歩行不能になるStage5はだいたい9歳前後といわれており、特に変形や拘縮の非対称が少ないケースのほうが歩行機能を維持しやすく、ストレッチは重要な治療となります。歩行不能後は電動車椅子での生活が主となり座位姿勢が多くなります。この時期から特に体幹筋力や下肢筋力の左右差などによる脊柱側弯に注意します。

座位が多くなるので、廃用による筋力低下には注意しなければなりません。10歳代は脊柱の変形と呼吸筋の筋力低下による呼吸機能の低下が問題となってきます。この時期も拘縮変形の予防は大切で特に胸郭の可動性を維持していくことは重要です。

関節可動域 筋力 疼痛 ADL評価 

 全体を通して関節可動域検査とともに筋張検査と筋力検査で筋を評価し、左右差の把握が大切になってきます。

疼痛の訴えもよく聞かれます。代償的な過使用による微細な筋損傷や筋の短縮による循環障害により痛みが生じることがあります。負担の少ない姿勢動作の検討材料になります。

学校生活やADL面の評価等、生活場面で残存能力の発揮や生活の質を向上させる戦略も求められます。学校では先生方への疾患を含めた児の全体像の理解が学校生活を主体的に送るために必要になってきます。

リハビリで注意すること

ストレッチにしても筋力トレーニングにしても動作練習にしても痛みを生じさせたり翌日まで疲労するような過剰な筋への負荷は進行を助長させる可能性があるため避けなければなりません。特に筋力トレーニングでは遠心性収縮は避けたほうが良い。

福祉用具に関しては短下肢装具や長下肢装具、立位台などは変形拘縮予防や機能維持に役立つため適切な時期に導入したほうが良い。

好きなことをみつける意味

ここまではざっと簡単にDMDについて紹介しましたが、これは医療的な側面のみです。ある程度経過や予後が決まっているなかで、人生をどう過ごすか。やりたいことをやる。趣味を楽しむ。それは誰だって思います。自分が感じて行動した結果は新たな経験や発見を得ることができ、達成感や成功体験につながり自己肯定感が育まれ生活を楽しめる活力になっていきます。

DMDの方は多感な時期に徐々にできることが制限されていきます。リハビリで体のことも大切ですが、同時に熱中できる好きなことを見つけ継続することも人生の幅を広げる意味でも大切になってくると思います。リハビリをする目的が一つ増えるだけでも、介入効果は違ってくるかもしれません。場合によってはリハビリより大切なことかもしれません。まあこれはあくまで個人的な考えです。