誰でも寝ながらリハビリできる!寝返りの効果とは 

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「寝返りはからだにどんな効果があるのか」「寝返りで運動になるのか」

 寝返りは就寝中に何度も行っている動作です。臥位でいるときには姿勢を変えたいときに寝返りで腹臥位や側臥位へと姿勢変換をします。いくら臥位でもずっと同じ姿勢でいることはだれでもしんどいことです。この寝返りをするための身体機能はどんなものがあるのか。それを利用することでどんな効果が期待できるのか。

神経系への効果

臥床傾向がある方にとって、寝返りは体性感覚や固有受容感覚が入力されることで覚醒レベルを上げる手段になります。覚醒レベルが高まると大脳皮質の働きも賦活され随意的な活動を広げることで全体的な筋緊張の調整につながります。寝返りは体幹や頭部の位置が変わるため空間への定位も促されます。寝返りによる体幹の回旋は、腹腔内臓器が伸長され腸神経系の促通により腸内運動が活性化し、便秘解消につながります。腸は平滑筋であり他動的な伸長刺激に対して縮もうとする働きが生じるためです。そして腸の運動は波打つように蠕動運動します。ちなみに口側から肛門側へは一方通行で動きます(Bayliss-Starlingの腸の法則)。寝返りは立ち直り反応を促通します。立ち直りを利用することで頭頸部体幹の回旋やそれに伴う筋活動を生じさせることができます。寝返り運動により臥床によるこれらの神経系への廃用の影響を減らすことが可能になります。特に寝返り運動は臥床から離床に向かうための神経系の賦活になります。

筋骨格系への効果

寝返り動作は先にも述べましたが頭頸部や体幹の回旋、肩甲骨の柔軟性、股関節回旋可動域が必要になってきます。つまり寝返り動作によってこれらの関節のストレッチや関節可動域練習ができます。体幹の回旋は胸椎や肋骨の可動域練習になり胸郭の柔軟性改善も可能になります。頭部回旋から始まる寝返りは、骨盤回旋からの開始より脊椎回旋可動域が多く必要ということから可動域練習をするなら、特に上位脊椎へのアプローチなら頭部からのパターンを選択するのもありです。また背臥位でいることでの関節拘縮予防につながります。筋に関しては寝返りは頚部回旋筋群や腹斜筋群、脊柱起立筋群、前鋸筋や菱形筋など肩甲骨周囲筋、股関節周囲筋の求心性と遠心生収縮を必要としますのでこれらを中心として多くの筋群へアプローチが可能です。

心肺機能への効果

日常的に身体を動かす機会がない方にとって寝返りそのものは運動になります。全身を使った運動になり大きな筋肉も動員されるため繰り返す寝返り運動で心肺機能への負荷を与えることが可能になります。ボルグスケールで11(楽)~13(ややきつい)くらいの負荷も容易に上げることができます。

寝返りの慢性腰痛への効果

車いすで過ごされている方は、腰痛の訴えが多いと思われます。実際に触ってみると最長筋や腸肋筋など腰背筋や中殿筋の過緊張がよく見られ、そこにアプローチすると腰痛の改善はみられます。もっとも、姿勢が大切ということは承知の上ですが、長時間座っていて自分で上手く動くことができない方にとっては負荷はどうしても蓄積されます。やはり車いすから降りることは姿勢変換として必要なことだと思います。このような状態の方で寝返り運動を通して腰痛改善する方はいらっしゃいます。上記のように有酸素運動効果や体幹筋群の活動量増加により筋緊張の調整や疼痛抑制が生じるため腰痛が改善していきます。これが習慣となると持続的な腰痛予防や身体機能の向上につながると思います。

 

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まとめ

寝返りは就寝時に何度も行っている不可欠な動作です。身体機能として呼吸や循環動態、筋緊張の調整、褥瘡、関節拘縮、筋の短縮予防に必要な動作になります。例えば脳性麻痺などによって抗重力位ではうまく体が動かせない方が、床上で寝返りをすることによって多くの機能を維持向上することができます。

以上