子どものADL評価 PEDIの評価方法や臨床での活かし方など

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「PEDIは実際どんなADL評価なのか」「PEDIでわかることは?」

小児のADL評価の一つにPEDIがあります。

 PEDI:Pediatric Evaluation of Disability Inventory

子どもの能力低下評価法

概要

6か月から7.5歳までの子どもの日常生活上の特定のことができる能力遂行状態を集めた評価尺度です。 障害のない7.5歳以下の子どものレベルより低下している場合は、より年長の子どもに対して用いることができます。特定のことができる能力とは子どもが習得して上手に使いこなしている機能的スキルのことで、遂行状態は保護者の介助レベル環境調整の量のことで、次の3つの領域をそれぞれ評価していきます。評価する領域は、セルフケア移動社会的機能になります。

セルフケア

食事、歯磨き、整髪、鼻のケア、手や顔を洗うこと、衣服を着ること、トイレ動作など

移動

ベッドやいす、トイレ、自動車などへの移乗や床上移動や屋内外歩行、車いす使用、屋外の路面、階段など。距離や速度、安全性などのパラメーターが組み込まれている。

社会的機能

実用的な理解と表出、安全に活動し、適切に行動し、不適切な行動を抑制する能力、遊びに参加する能力などのコミュニケーションや問題解決、集団行動といった子どもが家族や社会に関わっていくことに必要なこと

まとめるとセルフケア、移動能力、社会的機能の3つの領域を機能的スキル、介護者による援助、調整という3つの尺度で評価することになる。この3つの領域は3つの尺度毎に内容と項目があります。

対象

身体障害あるいは身体障害と認知障害をもった子どもたちです。つまり脳性麻痺に限らず多くの子どもたちが対象となります。

主要な障害が行動面や社会面にある子ども(自閉症、注意欠陥性障害児など)や機能的な制限が軽度から中等度の子ども(学習障害児など)に対する妥当性については検討中です。

測定尺度

機能的スキル(特定のことができる能力)

できる=1

ほとんどの場面でその項目を遂行することができる。またはすでにマスターした項目で機能的スキルはこのレベルよりも進んでいる。

できない=0

ほとんどの場面でその項目を遂行することができない。または能力が制限されている。

介護者による援助(介助レベル)

0=全介助

1=最大介助・・・介護者が半分以上介助している。

2=中等度介助

3=最小介助

4=見守り、促し、モニター

5=自立

各評価項目に対する介助レベルの定義はマニュアルに記載されています。

調整(環境調整の量)

N=調整なし

C=子ども向けの(特殊ではない)調整・・・普通のストローやおまるなど

R=リハビリテーション器具・・・滑り止め、歩行器、グリップの調整など

E=広範な調整・・・車いす、住宅改造

施行方法

聴き取りで行います。聴取対象は両親または子どもの支援に従事している専門職員です。子どもの能力を熟知している人が対象となります。両親への聴き取りで完全に施行するにはだいたい45分~60分必要です。子どもを熟知している専門家は20~30分で施行できます。

ちなみにPEDIの尺度は独立して用いることができます。例えば治療目標が移動だけに絞られている場合は、移動の尺度だけ実施しても良いとされています。

ただ複数の領域にわたる遂行状態の比較は治療の優先順位を決めるうえでどの領域に弱点があるかについての見通しがわかるので、全体を網羅することは必要と思います。

分かること

セルフケア、移動、社会的機能のそれぞれの点数をもとにスコアを出すことによって基準値標準スコア尺度化スコアが導き出されます。

基準値標準スコアは同年代の子どもの能力に比べるとその子の遂行状態がどの程度かがわかります。つまり基準値標準スコアは、各領域で同年齢と比較して到達しているところとしていないところがわかり、治療領域の選択がしやすくなります。

尺度化スコアは子どもの能力を0~100点で表されPEDIでの最大値と比較してどの程度に落ち着くかがわかります。つまり尺度化スコアは子どもの能力の改善度合いがそのまま反映され一貫した治療効果の経過を見ていくことができます。

 PEDIを臨床でどう活かすか

目標を明確化する

マニュアルに難易度マップというものがあり、尺度化スコアで0~100点までの中に領域毎の各項目が難易度順に並んでいます。実際に子どもを評価し、達成している項目を難易度マップの項目にチェックしていき、達成されている項目より難易度が低い項目に未達成の項目があると、その項目は次に達成されるであろう目標となります。また、達成した項目の次のステップとして一段階難易度が高い項目も目標として挙げられる可能性も考えることができます。

小児リハビリテーションの対象者は個別性が高く、ADLの発達は個人差が大きいです。そのため、PEDIを使用するとその子どもの能力がわかるとともに次に目指すべき目標が明確化しやすくなります。

目標への取り組みがスムーズになる

実際に保護者と話しながら聴き取りを行う中で、保護者と専門家ともに子どものADLの状態がわかることで、保護者は子どもの課題への気づきが促されます。次の目標への取り組みがスムーズになります。

治療効果の判定や治療戦略として活用する

尺度化スコアにより子どもの治療経過がわかります。子どもの機能的スキルの向上はもちろん環境調整を行った場合での自立度の変化など治療戦略を考える上で活用できます。

 

粗大運動の評価はこちら

 ↓GMFCSについて

ptemon.hatenablog.com

 

↓GMFMについて

ptemon.hatenablog.com

 

 以上