歩くだけでもリハビリになる!歩行の効果とは

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「歩行練習は歩行能力向上のため?」「歩行困難な方に歩行練習する意味は?」

ザ・リハビリといえるくらい治療頻度や目標に上がってくる歩行。実際、歩行練習は数多くリハビリの現場で取り組まれています。その大半は歩行能力の向上や歩行獲得に向けて行っていることと思われます。比較的目標に上がりやすく、私たちの日常では重要な位置を占めている歩行にはどんな治療的側面があるのでしょうか。

神経系への効果

中枢神経系の下位レベルで歩行リズムを発現する神経回路が存在します。脊髄にはCentral Pattern Generator;CPGがあり、歩行動作時の屈筋と伸筋間の周期的な運動出力を運動神経に与えています。これが交互運動を生み出しパターン化される歩行動作を実現させます。CPGを発現させるには立脚期の荷重と立脚終期の股関節屈筋群の伸長が引き金となっています。

脳幹にも歩行運動の発現に関わっている中脳歩行誘発野Mesencephalic Locomotor Region;MLRがあり、大脳皮質で制御していない歩行の開始と終了を決定すると考えられています。

小脳は円滑な随意運動に重要な役目を担っています。運動の実行状況と結果から、運動出力の調整の役割があります。さらに小脳は網様体脊髄路や前庭脊髄路を促通して歩行運動中の姿勢制御や筋緊張の調整を担っています。

大脳基底核では、パーキンソン病でみられるすくみ足、小刻み歩行など運動の選択や発現に関わってきます。そのためMLRにも投射をもち、歩行開始や停止、方向転換などに関わってきます。

前庭や固有受容器、視覚などから誘発される姿勢反射は前庭脊髄反射や立ち直り反射、ステッピングやホッピングなど姿勢保持に必要な要素になります。

大脳皮質は視覚情報からの調整や脊髄反射活動を修飾し円滑な動作の遂行に貢献しています。視覚情報からは障害物の回避を行います。脊髄反射活動では下肢筋群の脊髄反射の感受性を変化させることで歩行時にとっさに路面に適応するように制御し、応用歩行の遂行に重要になっています。

まだまだ書ききれないくらいのことが起こっていますが、これらの神経系の賦活により、バランス能力や協調性の改善、並列課題処理、注意機能、応用歩行の獲得など歩行に関わる神経機能への効果を得ることができます。神経系の働きにともない歩行時の筋骨格系の働きも賦活され同時に効果が得られます。

筋骨格系への効果

 歩行周期に応じて床反力によって関節トルクは常に変化していき選択的な筋活動や筋出力も変化していきます。立脚期における前脛骨筋、下腿三頭筋、大腿四頭筋、中殿筋、大殿筋などの遠心性収縮、蹴り出し時における求心性収縮などさまざまな出力のパターンがみられます。ちなみに床反力のピークは荷重反応期と立脚終期で体重の120%もの衝撃が加わることになります。また、ロッカー機能など効率的な歩行運動を遂行する上で大切な四肢体幹の関節可動域が必要になってきます。歩行時の姿勢制御として体幹の回旋や上肢の振りも見られ、体幹筋活動や肩甲骨周囲筋や上肢の筋活動も同時に必要になってきます。

歩行動作を通して特に下肢の筋力強化による支持性や足趾・足関節周囲筋のストレッチ、上肢や体幹の筋力や可動性を維持向上することができます。廃用性筋萎縮を予防するために毎日の歩行は昔から言われていますが、歩行することで体幹など多くの筋が働くため、筋力の維持につながります。

 呼吸循環器系への効果

持続的な歩行は筋、全身持久力の向上が得られます。持久性トレーニングをすることによって毛細血管量の増加や一回拍出量の増大、動静脈酸素較差増大などが作用し、最大酸素摂取量が増大し持久力が高まります。呼吸筋の活動も促進され、胸郭の可動性や換気量の維持拡大が得られます。

さいごに

細かく言えばまだまだありますが、歩行は多くの身体機能へ介入ができる実用的な治療手段となりえるということです。日常生活で行っている動作が治療につながっているということですね。

歩行機会が少ない方にとっては歩行器で歩行するだけでもトレーニングになり、日常的に歩行している方にとっては、現在の機能を低下させないように継続することや、今よりも多く歩行に取り組んでみることでさらに機能を向上させることが可能です。

実際に脳性麻痺のお子さんで歩行器歩行を行う時間を伸ばしたら、歩行姿勢や歩行の安定性が向上するケースがあります。他にも介助歩行が安定したり、座位姿勢が良くなったりと様々な効果がみられます。

生活自体がリハビリだと言う方は多いですが、まさにその通りです。

 

以上