運動制御の流れを簡単に説明 運動野・小脳・大脳基底核の機能

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「のどが渇いたので水分を摂りたい。」

視床下部でその本能的欲求が生まれ、大脳辺縁系で意欲となり前頭連合野において意志となった。ダイニングテーブルに目をやると、水と氷が入ったグラスを発見した。グラスの表面には水滴がたくさんついている。水滴が集まって所々テーブルにも垂れている。この水を飲むためにはどうすればよいか。

網膜に結像されたその物体は視神経から外側膝状体を介し後頭葉の一次視覚野で知覚される。そして側頭連合野において過去の経験からこれは良く冷えた水であることを認識し、グラスを手に取りこの水を勢いよく飲み干したいと考える。頭頂連合野で過去の経験からおおむねのグラスまでの距離とそのグラスの重さを推測。大脳の中心前回にある運動前野は運動野とともに過去の類似した経験などから、どのようにして目の前にあるグラスを手に取るのかをある程度の動きを決定する。

運動の抑制出力を調整する大脳基底核において、この運動に関する必要な上肢の動きを出力し不要なその他の動きを抑制して、その運動パターンを補足運動野に返しまとまった運動を作る。

運動プログラムは皮質橋小脳路を通り小脳に入力される。小脳に保存されている運動プログラムは過去に運動学習した成果であり、その情報が小脳核から視床を通り運動前野へ流れる(小脳大脳連関)。手を最短距離に動かすためやグラスを持つための筋緊張の調節や掴むタイミングなどの時間的調節は小脳大脳連関による運動調節が必要である。

こうして補足運動野と運動前野で出来上がった運動プログラムは、随意運動の出力源である運動野の大錐体細胞から錐体路を通り開始される。

腕を伸ばしてグラスを手に持ち口元へ運ぶ。大脳基底核は大脳からの記憶や予測に対して、無意識に合目的的な運動を選択する。この場合、グラスを口に運んだ瞬間、口を開く動作がそれに含まれる。グラスに触れた瞬間、ひんやりと感じる。

皮膚から冷覚を伝導するAδ線維が脊髄後角から脊髄でニューロンを変え、対側に交差し、外側脊髄視床路を通り、視床に終わる。そして体性感覚野に投射され認知される。

グラスを持ち上げたときには、上肢の筋紡錘や腱紡錘により筋緊張の状態や関節角度が分かる。そのGⅡ線維は脊髄後角から後索路を上行し、延髄の後索核に終わる。後索核からは内側毛帯を通り視床へ。そこから体性感覚野に達する。これらのフィードバックを元に大脳や小脳での予測と比較が行われ、予測と大きく違えば、修正しなければならないし、あっていればスムーズにことを済ますことができる。

仮にグラスが予測した重さよりずっと重かった場合、非意識型深部知覚伝導路によって、その不具合に対し小脳で適切な筋緊張を算出して、網様体脊髄路を下行しγ細胞に投射することで、筋紡錘を刺激してコップを持った上肢の屈筋群の筋緊張を調整する。

また、グラスに手を伸ばすための運動の軌跡がずれていた場合、その結果は脊髄オリーブ路を通り延髄のオリーブ核に伝達される。オリーブ核からはオリーブ小脳路を通り登上線維になりプルキンエ細胞樹状突起シナプス形成し、皮質橋小脳路から顆粒細胞を介し小脳表面を走行する平行線維とプルキンエ細胞間のシナプス結合を変化させることで運動プログラムを修正する。

こうした調節によって、テーブルに戻したグラスを再度手に持ったときには、その修正されたプログラムによって予測と合致した活動が認められるであろう。欲求を満足したときは、その欲求を満たすために繰り返した行動が終結したときである。

 

以上